黒部横断 大タテガビン第二尾根 その1

2月26日
朝から天候が悪い。予報では日本の南岸を低気圧が通過。その後冬型に。
午前中はそれほど影響はないと思ってたけど、朝からどんどん天候が悪くなっていく。
DSCN0804.jpg

湿雪がウエアにまとわりつく。表層にはかなり立派な弱層があって、行動も慎重になる。
みんなはどう思ってたか分からないけど、僕は今日中に第二尾根抜けて南尾根に取り付けたらなあ。。。
なんて考えていた。
第二尾根そのものには難しいところはなく、隣に見える第一尾根のいかついリッジに比べたら平和そのもの。
ところどころ乗越すのに手間なキノコ雪はあったけど、概ね順調に進んだ。
IMGP5000.jpg

でも相変わらずトップは空荷。雪は深い。
午後になって雪と風が容赦なくたたきつけるようになった。
パタゴニアってこんな感じなんかなあ。。。などと考えながら、でももっとすごいんだろうなあ。
でもここの気象条件も、世界的に悪いんだろうなあ。。。
尾根がだんだん広い斜面になって消えた。もういつ雪崩れてもおかしくない。
しかしどこもテントを張れそうな場所はない。行動食を前倒しでザックの奥から引っ張り出す。
腹が減っては戦はできぬ。
とにかくいい場所が見つかるまで行動し続けるしかなさそうだ。
トップのラッセルでどんどん雪崩が発生する。
ラインを選んで慎重に進む。
出発から12時間。
ようやく1960m付近にテントを設営。吹き溜まりの悲惨な場所だったが、ここ以外に張れそうな場所はない。
全身ずぶ濡れ。
空炊きしても乾きそうもないくらいに濡れてしまった。
恐るべし、黒部の雪。
2月27日
DSCF1532.jpg

天気予報では全く行動できなさそうなことを話していたので、あきらめてゆっくり寝ていた。
朝起きてまず雪かき。
テントが半分埋まってしまった。今日は一日中雪かきか~と思っていた。
ところが様子がおかしい。だんだん明るくなってきて、太陽が出てきたではないか。
晴れている!
あわてて準備をする。
どうせ夜はまた冬型で荒れる予報。今の場所ではしのげない。
それにこの先は南尾根P5の基部をトラバースしなければならない。これ以上積もると行動そのものが
危うくなる。
DSCF1529.jpg

この先に幕営地があるかは定かじゃないけど、とにかく動ける時には動かなければ、いつまでたっても
前に進まない。
1ピッチ懸垂した後は、岩の基部をトラバース。
何とかいい場所はないものかと探していたところ、なんとホテルのような岩小屋があるではないか!
これを逃さない手はない。
翌日のためにロープをFIXして、岩小屋にテントを張る。
IMGP5015.jpg

「ホテルガビン」と名づけたその岩小屋で、久しぶりに平和な夜を過ごすことができた。
本日の獲得距離、地図上で1cm。


ページのトップへ